脂漏性脱毛症は、常在菌であるマラセチア菌の餌である皮脂などが大量にあることで起こります。その餌が豊富にある頭皮環境が作られる原因として、脂っこい食事をとる、頭皮の不衛生にする、などが考えられます。
脂漏性脱毛症を避けるためには、油っぽい食べ物を控える必要があります。脂を多く含んだものばかり食べると、脂質を体内の酵素で分解しきれずに、血液中に流れ込みます。すると、その脂質を体外に排出しようとするために、皮脂腺から大量の皮脂が出るようになります。脂漏性脱毛症による薄毛を予防するために、日頃からバランスのとれた食事の摂取を行い、皮脂腺から過剰な皮脂分泌を抑える必要があります。
また脂漏性脱毛症を避けるためには適切なシャンプーも重要です。髪を毎日洗わなかったり、シャンプーやリンス後にしっかりとすすがなかったりすると、頭皮に皮脂やシャンプーやリンスが残ってしまいます。これらは、マラセチア菌の格好の餌となり、菌が増殖し、沢山の脂性のフケが作り出され、頭皮環境が悪化します。毎日、正しくシャンプーをするようにすることが脂漏性薄毛症の対策に重要です。
脂漏性脱毛症による薄毛が進行すると、食事療法やシャンプーでは治療が困難で、医療機関での治療が必要になります。これまで、ビタミン剤の内服や塗り薬の塗布が行われてきましたが、毛髪再生効果が明らかな治療法は存在せず、新規治療法の開発が待望されていました。近年、毛髪再生医学の進歩により開発されたハーグ療法、HARG療法が、脂漏性脱毛症に効果的であることが知られるようになり、治療が行われるようになっています。
ハーグ療法は、頭皮に直接、毛髪再生因子を注射する治療法であり、薄毛になった部位での自己毛髪再生を促します。頭皮に数回の再生因子を注射する必要があります。
35歳、男性。脂漏性脱毛症の治療、ハーグ療法
症例経過:数年前から、頭皮に脂漏性皮膚炎を患い、塗り薬の塗布やビタミン剤の内服を行っていた症例です。1年くらい前から、抜け毛が多くなり、薄毛が進行してきたために、このまま進行するのではないかと心配になり、仙台中央クリニックを受診していただきました。診察したところ、頭皮は、広範囲に赤くなっており、フケが多く、脂漏性皮膚炎が広がっていました。自己毛髪は細くなり、本数は減少し、前頭部や頭頂部に薄毛領域が認められました。50歳くらいまでは、毛髪を維持したいと望まれたために、毛髪再生を目的として、ハーグ療法を開始しました。3回目治療が終了した後から、髪に艶が出て太くなり、失った自己毛髪の再生が認められました。
症例解説:脂漏性脱毛症により、薄毛が進行すると、自己毛髪を回復するのは、困難を伴います。これまで治療に難渋していましたが、近年、ハーグ療法が脂漏性脱毛症に自己毛髪再生効果を示すことが明らかになり、治療として用いられるようになっています。ハーグ療法は、1か月に1度、頭皮に直接栄養因子を注入する治療法ですが、3回から4回治療を行ったあたりから、効果が認められることが多く、増毛、育毛が期待できます。ハーグ療法には、薬液の注入時に痛みを伴い、治療後頭皮の発赤や、出血が認められるというデメリットがあります。施行前に、十分な説明を受けた後に、治療に臨んでください。